「伝えたつもりなのに伝わっていない」「部下が本音を話してくれない」――。
こうしたすれ違いは、管理職のコミュニケーションの取り方を少し見直すことで改善できる場合があります。
本記事では、リーダーに求められる役割から、双方向のコミュニケーション、積極的な聴き方、相手に伝わる話し方まで、職場で実践しやすいポイントを整理します。
1.リーダーの役割とは
企業や組織におけるリーダーには、単に自分自身の業務をこなすだけではなく、組織の目的を達成するために、メンバーが効果的・効率的に協働できる状態をつくる役割があります。
そのため、管理職には「何をやるべきか」を示すだけでなく、「誰が、どの役割を担うのか」「どこまで責任を持つのか」「誰から指示を受けるのか」といった組織上のルールを明確にすることも求められます。
指揮命令系統を明確にする
組織では、誰が誰に対して指示を出すのかが曖昧になると、現場に混乱が生じます。
たとえば、ある社員が複数の上司から異なる指示を受ければ、何を優先すべきか分からなくなります。
指揮命令系統を整えることは、組織運営の基本です。
管理できる人数には限界がある
一人の管理職が十分に状況を把握し、適切に支援できる部下の人数には限界があります。
部下が増えすぎると、一人ひとりとの会話や面談、日常的な声かけが減り、問題の発見が遅れやすくなります。
職種や仕事の複雑さに応じて、管理職がどこまで部下の状況を把握できるのかを考える必要があります。
責任と役割を明確にする
「誰がどこまで担当するのか」が曖昧だと、仕事の抜けや重複が生じやすくなります。
職務範囲と期待する達成水準を明確にすることで、部下も自分が何を求められているのか理解しやすくなります。
職務を割り当てるときの3つの視点
・整合性:組織の目的につながる仕事になっているか
・能力向上:本人の成長につながる仕事になっているか
・非重複性:不必要な仕事の重複がないか
2.リーダーに必要な3つのスキル
部下を持つリーダーに求められるスキルはさまざまですが、特に重要なのが「問題発見」「部下育成」「コミュニケーション」の3つです。
これらは、それぞれ別々の能力ではありません。
部下の話を聴かなければ、現場で起きている問題は見えにくくなります。
また、上司が一方的に答えを与えてしまえば、部下自身が考える機会が減り、育成にもつながりにくくなります。
つまりコミュニケーションは、問題発見と部下育成を支える土台でもあるのです。
3.コミュニケーションは「本質的な問題」
職場でトラブルが起きたとき、「コミュニケーションの問題だから、たいしたことではない」と考えてしまうことがあります。
しかし実際には、コミュニケーションこそが、さまざまな職場の問題の根にあることが少なくありません。
上司が「伝えた」と思っていても、部下が理解していなければ行動にはつながりません。
部下が困っていても、相談できる関係がなければ問題は表面化しません。
本音や違和感が共有されないまま時間が経過すると、小さな問題が大きな問題へ発展することもあります。
コミュニケーションとは、単に「言葉を交わすこと」ではありません。
重要なのは、情報だけでなく、相手の意思や感情も含めて相互に理解し合うことです。
コミュニケーションで分け合う3つのもの
・情報
・意思
・感情
仕事上の会話にも、言葉だけではなく、話し手の意思や感情が含まれています。
4.一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションへ
管理職のコミュニケーションで特に見直したいのが、「ワンウェイ・コミュニケーション」から「ツーウェイ・コミュニケーション」への切り替えです。
ワンウェイ・コミュニケーション
上司が業務の指示や目標を一方的に伝え、部下からの反応や意見を求めないコミュニケーションです。
指示を素早く伝えるには有効ですが、部下が内容を正しく理解しているのか、仕事を進めるうえで何か問題を抱えていないのかを確認しにくいという弱点があります。
一方通行の例
「この資料、明日までに作っておいて」
期限は伝わっていますが、
「何のための資料なのか」
「どの仕事より優先するのか」
「部下は対応できる状況なのか」
までは分かりません。
ツーウェイ・コミュニケーション
上司が質問し、部下が状況や考えを伝え、その内容を受けて上司が追加の質問やアドバイスを行うコミュニケーションです。
部下も自分の意見や困っていることを伝えることができ、上司と部下の双方が理解を深めることができます。
双方向の例
「明日のA社との商談で使いたい資料です。明日10時までに作ってほしいのですが、今抱えている仕事との兼ね合いは大丈夫そうですか?」
目的や期限を伝えるだけでなく、部下の状況を確認することで、認識のズレを小さくできます。
重要なのは、「指示を出したか」ではありません。
相手と認識を合わせるところまでコミュニケーションできたかということです。
5.部下の本音を引き出す「積極的な聴き方」
人の話を聴くとき、言葉の意味だけを追っていても、相手の本当の気持ちは十分に理解できないことがあります。
大切なのは、相手が発した言葉だけではなく、その背景にある感情や、「この人は何を伝えたいのだろうか」というところまで理解しようとすることです。
ためらい、声の調子の変化、表情、姿勢、手の動き、視線など、言葉以外のサインにも注意を向けることで、相手の状態が見えやすくなります。
こうした聴き方が「積極的な聴き方」です。
「聞いている」ことを相手に伝える
実際には話を聞いていたとしても、視線が合わない、無表情である、別の資料を見ながら返事をする、といった態度では、相手には「話を聞いてもらえていない」と感じられることがあります。
「自分は聞いている」だけではなく、聞いていることが相手にも伝わることが大切です。
理解したことを相手に返す
管理職の場合、ここから一歩進めて、部下自身の考えを引き出す質問をすることも重要です。
たとえば、
「あなたはどう考えている?」
「原因は何だと思う?」
「どうすればいいと思う?」
「まず何からやってみる?」
と問いかけます。
上司がすぐに答えを与えるのではなく、部下自身に考えてもらうことで、コミュニケーションを部下育成の機会に変えることができます。
6.言葉以外のコミュニケーションにも注意する
人は言葉だけで相手の態度を判断しているわけではありません。
表情、声の調子、視線、姿勢、距離などの「ノンバーバル・コミュニケーション」も、相手に与える印象を左右します。
たとえば、部下が相談に来たときに、上司がパソコンの画面を見たまま返事をしたり、ペンをいじり続けたり、腕を組んだりすると、「歓迎されていない」「早く話を終わらせたいのではないか」と受け取られる可能性があります。
相手にマイナスの印象を与えやすい行動
・表情が硬く、反応がほとんどない
・視線が定まらない
・相手を見ない
・机や持ち物を小刻みに触る
・腕を組む
・体を後ろに引く
・うなずきが機械的である
大切なのは、形式的に「良い態度」を演じることではありません。
相手を理解しようとしている気持ちが、表情や姿勢、視線、反応にも表れるようにすることです。
7.相手に伝わる「話し方」
聴くことと同じくらい重要なのが、相手に分かるように話すことです。
上司が自分では十分に説明したつもりでも、部下が理解できていなければ、伝えたことにはなりません。
相手の立場や理解度を考えながら、内容を整理し、相手が理解できる言葉で伝えることが重要です。
また、指示やフィードバックでは、抽象的な表現だけで終わらせないことも大切です。
たとえば、
「もっと主体性を持って」
と伝えるだけでは、部下は具体的に何を変えればよいのか分かりません。
抽象的な言葉を、具体的な行動に変える
×「もっと主体性を持って仕事をしてほしい」
↓
○「問題が起きたときは、指示を待つ前に、自分なりの対応案を一つ考えて相談してほしい」
期待する行動を具体的に伝えることで、部下も「何を変えればよいのか」を理解しやすくなります。
8.管理職のコミュニケーションを見直すチェックポイント
ここまでの内容を踏まえて、日頃の部下との接し方を振り返ってみましょう。
まとめ
効果的なコミュニケーションは、リーダーシップの土台となるものです。
部下との信頼関係を築くには、相手の言葉だけでなく、その背景にある感情や意図を理解しようとする「聴き方」と、相手が理解できるように整理して伝える「話し方」の両方が重要です。
さらに、一方的に指示するだけではなく、質問を通じて部下の考えを引き出し、必要なフィードバックを行うことで、コミュニケーションは部下育成の機会にもなります。
「言ったのに伝わらない」「部下が本音を話さない」と感じるときは、相手だけを変えようとするのではなく、まず自分自身の聴き方・話し方・問いかけ方を振り返ってみることが、改善の第一歩になります。
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